|
|
|
 |
|
新潮社/2007
¥1000
季刊誌『考える人』の中でも好評企画だった「短篇小説を読もう」特集号。丸谷才一、村上春樹、川上弘美らが短篇文化を語り、海外文学短篇のアンソロジーを企画し、グルニエや梅崎春生、ブラッドベリら名だたる短編作家を論じ…。とにかく多角的に短篇小説の魅力を分析し、徹底的に楽しむ姿勢が読み応え十分。アンケート企画「わたしの好きな短篇3作」も、読者が自身の体験と照らし合わせて読める、小説好き短篇好きには心から楽しめるページです。何より表紙にずらりと並んだ短篇集の背表紙を見るだけでもわくわく。真ん中のタイトル文字の裏に隠れた本はなんだったのか考えるのもまた面白し、です。 |
 |
|
M.デュラス、田中倫郎 訳/集英社文庫/1988
¥600
仏領時代のベトナム。太平洋に面した防波堤に土地を買い、そして破産したフランス人一家の悲劇と愛憎の物語。『ラ・マン』と同じく作者デュラスの少女時代の実体験を元に描かれた、植民地における人間関係や風俗の描写、そして野性的な恋愛模様が素晴らしい。母、兄、妹の三人が織りなす作者特有の風景、デュラスの世界における重要なテーマ・処女性のきらめきにしびれます。こちらは集英社文庫版。 |
 |
|
尾辻克彦/角川文庫/1981
¥900
枕、革靴、飛行機、電球、ラジオ、消しゴム…様々な「モノ」に出会った少年のあの日から現在まで、その思考を自由に行き来させ、不思議なノスタルジアあふれるエッセイ集に仕上げるのはこの人ならでは。終戦前後だった著者の初期の子供時代の思い出は独特の存在感があり、それぞれの物が鈍く輝き出す様は読んでいてどこか切ない。少年だけが見ることが出来た「モノ」があったのでしょう。片山健えがく陰鬱な表紙が素晴らしい。角川文庫版。 |
 |
|
テス・ギャラガー、黒田絵美子 訳/中央公論社/1990
¥1300
アメリカの詩人にして作家、そして故レイモンド・カーヴァーの妻としても知られるテス・ギャラガーの第一短篇集。家族、結婚、女、男、そして自然。様々な要素を大切に包み込みながらゆるやかな流れのように進んでゆくテスの世界は、あくまで優しく暖かく、そして上質のユーモアでくるまれています。みずからのルーツやカーヴァーとの生活もエピソードのなかに巧みに混ぜながら、独自の視線を貫く美しく潔い短篇集。その自然の描写の豊かさゆえか、深い森のような包容力、暖かな雨が降る日のような懐かしさ、そんな香りが漂うような一冊でもあります。 |
 |
|
北村太郎/小沢書店/1985
¥1200
詩人・北村太郎の詩論とエッセイ集。「荒地」の同人として、一人の詩人として、あるいはただの猫好きとして…。日々おこる様々な出会いと詩への思いと日常を穏やかに綴った文体はすがすがしく潔い。思い出の中に浮き沈みする人々との交流や記憶の断片は、ただやわらかく暖かく。随筆集としても存分に楽しめ、80年代の詩壇を知るにも得るものは多い一冊です。いまはなき小沢書店の造本も美しい。 |
 |
|
フィツジェラルド、飯島淳秀 訳/角川文庫/1971
¥400
フィツジェラルドの短篇集。「バビロン再訪」などの別タイトルでも知られる表題作ほか、「冬の夢」「金持ちの青年」など代表的な短編5作が収められています。パリに帰ってきたばかりに再燃する若き日の放蕩の夢、それゆえの悲喜劇。フィツジェラルドの真髄が味わえる佳品で構成された、往年の角川文庫版です。表紙には映画化のスチール写真。 |
 |
|
福原麟太郎/文藝春秋新社/1980
¥900 ■sold
英文学者にして文筆家・福原麟太郎の随筆集。タイトルの通り、本、本、本の話…。芥川、太宰、吉田健一、そしてチャールズ・ラム。日本と欧州を行き来した文学者ならではの視点で、「書物のある人生の豊かさ」を読者とわかちあってくれます。学者の読書エッセイは、小説家などとまた違った味わいがあるもの。「本棚の前の椅子」とは、1958年に雑誌『文学界』に連載した随筆のタイトルをそのままつけたそうですが、それにしても素敵な題名です。随筆とコラム計26本所収。装幀には花森安治。 |
 |
|
トニー・タナー、佐伯彰一ほか 訳/白水社/1980
¥2200
言語の都市 -City of Words- 。それは、現代アメリカ作家が建設した「自由の最後の砦」。イギリスの文芸評論家トニー・タナーが1950年代から70年代にかけてのアメリカ文学を概観する本書に登場するのは、マラマッド、バーセルミ、バース、ナボコフら12人の精鋭たち。「この期間に小説の諸形式で表現されたアメリカ的想像力を理解すること」が執筆の第一の目的だと語る著者の見た、アメリカ小説から生まれる言語によって建造された都市とは。刊行から30年近く経っても名著の誉れ高い、アメリカ文学研究書として重要な一冊。読みやすい構成と訳文で、アメリカ文学に親しむ確かな道を案内してくれます。 |
 |
|
福島正実 編/三一書房/1975
¥1000 ■sold
「SFほど、世の常識を破ってセックスというものを考えてみられるものもありません…」と語る編訳者の福島正実が選ぶ24編。いずれも何らかの形でエロスを表現したものばかり。美貌のアンドロイド、犬の情念を読む事ができたら、未来世界でタブーなものとは…小松左京、筒井康隆、眉村卓ら日本人作家と、シェクリィ、マシスンら海外作家の構築するSF世界の中に見るエロチシズム。SFの楽しみ方数あれど、人間の根源であるエロスと自由形式のSFが融合すれば、大人向けのちょっと楽しい一冊ができあがります。読んで損のないユニークな短編揃い。表紙とカットには真鍋博のキュートなイラストを。 |
 |
|
フランソワーズ・サガン、朝吹登水子 訳/新潮社/1958
¥1500 ■sold
ベルナール、ニコル、ジャック、ジョゼ…サガンの小説には欠かせない様々な男女が綴るパリでの恋愛物語。それぞれの恋がタペストリーのように織りあわされ、つむぎだされる淡い情景に、けぶるようなパリの街が映しだされるようです。どこか物憂げで気だるく、しかし透明感のあるサガンの第三作。訳者あとがきにある「ただ独りで部屋にいる時、何かしっとりとしたものに触れたい時に読む本である」という言葉が印象的。なによりも、函も本体もその装丁の美しさでひときわ目を引く本書です。文庫版も現在は品切。 |
 |
|
B.マラマッド、加島祥造 訳/新潮文庫/1984
¥600
ニューヨーク出身のユダヤ人作家・マラマッドの短編集。「最初の七年間」「天使レヴィン」「夏の読書」「最後のマヒカン族」などのきらめく佳篇が13作収録されています。以前も紹介した角川文庫『魔法のたる』と収録作品は同じですが、こちらは加島祥造の名訳になる新潮文庫。亡命、商人、流浪などユダヤ人的モチーフの中で、恋愛や読書や旅を描き、人生の苦しさをそこから生まれる何とも言えないユーモアでくるみます。代表的な短編集である本書はマラマッド入門としても最適。優れた短編を味わう面白さと、独特の作風による不思議な余韻に包まれるでしょう。 |
 |
|
T.ピンチョン/国書刊行会/1985
¥3000 ■sold
あらゆる時代、あらゆる姿となってあらわれる存在「V.」。「巧妙な時間構造と錯綜した構成のうちに浮かび上がらせる今日的混沌の縮図」(本書カバーより)とされるV.を追って時空を超えて描かれる世界。60年代のアメリカ小説を代表するピンチョンのデビュー作である本訳書は、ながらく品切れとなっている版。また様々な新訳の予定もあるとのことですが、ピンチョンを読むなら、この国書刊行会版で是非。加納光於による美しいマーブル模様の装丁が目をひきます。
|
 |
|
吉田健一/中公文庫/1982
¥500 ■sold
書架。本棚。その間を逍遙する事こそ書物愛好家の喜びであり、そこから抜け出せなくなるのはむしろ本望であるかもしれません。著者自身の本棚から自由に選んだそれぞれの書。ラフォルグ、プルウスト、ワイルド、イエイツ、ディラン・トオマス...。様々な作家、詩人の書物の間をくぐり抜け、吉田健一独特の文体でそれらの断片を味わう愉しみ。多少の歯ごたえは保証付き、読書家のための中公らしい文庫です。表紙が美しい。
|
 |
|
ポール・ギャリコ、矢川澄子 訳/王国社/1990
¥900
↓にも文庫版で紹介した、『七つの人形の恋物語』王国社版です。物語はおなじみ、主人公の少女ムーシュと、人形使いの男との間に繰り広げられるメルヘン的なしかし倒錯したラブストーリー。翻訳には同じく矢川澄子、こちらの装丁には幻想的な作風にファンも多い、建石修志が筆をふるっています。イラストも多数差し挟まれ、作品のファンだけでなく、建石ファンにも嬉しい本書。現在は建石氏の別のカバーイラストによる版が刊行されています。巻末には精神医学者の山中康裕氏による解説付き。
|
 |
|
谷内六郎/旺文社文庫/1980
¥1000 ■sold
旅、絵、叙情、追憶.... 谷内六郎の世界を形づくる一部である、それらの要素がふんだんに盛り込まれた贅沢な文庫です。「町のコケシ屋に日が暮れて/鳴子の少女の眠る頃...」美しい詩と共に鳴子の町を紹介し、童謡にのせて横浜をめぐり、八丈島や富山にでかけ。汽車に乗り散歩をし子供の頃の思い出を掘り起こしながら、一文一文を、一枚一枚の絵を丁寧に豊かな情感と共に集めたこの旅の絵本。どこか淋しげな、でも読むほどに心のどこかが暖かくなる一冊です。
|
 |
|
浦松佐美太郎/四季社/1951
¥1200 ■sold
タイトルもどこか意味深、帯にも「一般人必読の明快な教養書」と勇壮に銘打たれた本書は、「義理の追放」「国語教科書を批判する」「革命と戦後派」と硬派なタイトルがずらり。もちろん教養書らしく、書物に関するページ、日本探偵小説についての評論(批判?)なども。評論・随筆・翻訳でも活躍した浦松佐美太郎が、戦後6年経過して著した質実な社会論、日本人論。猪熊弦一郎の装幀がことさら魅力的です。 |
 |
|
谷川俊太郎/出帆新社/1986
¥1000 ■sold
この詩人ならではの紡ぎ方で、「愛」を様々な言葉と形式と角度から表現した詩とエッセイ。男女の愛、自己愛、人間愛。そのすべてを優しくからめつつ、行間から様々な事を受け取れる名著。初出の実業之日本社版の内容に加え、他書からの文章も加え80年代に編み直されたものですが、今回も装幀が串田孫一なのが嬉しいところです。
|
 |
|
野坂昭如/新潮社/1971
¥1000
元華族、屋敷は一万坪、気障に生きる事を信条とし、目下の趣味は楽器いじりとそして...カンという名の青年が、周囲や家族もともなって夜な夜な繰り広げる、破廉恥、乱痴気、放蕩の限り。ありとあらゆるエロとグロが、機関銃のように繰り出される言葉の連続と羅列とにあいまじり、めまいを覚えそうな本書。合間に実在の人名がふんだんに差し挟まれ、妙な既視感もこみあげる、野坂ワールド全開の夢見る物語です。装幀には宇野亜喜良。
|
 |
|
笠信太郎/暮しの手帖社/1966
¥700
ジャーナリスト・笠信太郎が雑誌『暮しの手帖』に晩年連載していたエッセイをまとめた一冊です。「よじのぼりたがるくせ」(何に?)「手をつなぎたがらぬくせ」(誰と?)「近道をしたがるくせ」(どこへ?)...というように、現代日本人の困った風潮を、"くせ"と称して評論。婦人誌の掲載らしく、優しい文章の中に、戦前戦後を駆け抜けたジャーナリストの鋭い視点が光ります。本書発行の翌年に著者は永眠しますが、その時から40年。日本もどう変わったのか変わらないのか、みてみるのも面白いのでは。ユニークな装幀はもちろん花森安治。
|
 |
|
北杜夫/文春文庫/1974
¥500
ジバゴではなく「ジバコ」の名を持つ怪盗が登場する、北杜夫によるファンタジー。もちろん子供向けとは言えず、さりとて大人向けと言ってもよいのか...明智小五郎やジェームズ・ボンドらを向こうに回しての大活躍は、空想か妄想か。どくとるマンボウの愛すべき偉大なる稚気によって生み出されたキュートな一冊です。それ一本がまるで短編のような、遠藤周作による解説つき。表紙には谷内六郎というのも嬉しい。
|
 |
|
種村季弘/河出文庫/1985
¥600
「アナクロニズム」とは、著者独自の幻視的目線で選ばれた、奇想・妄想にとりつかれた人々が繰り広げた無価値な夢であり幻。地球空洞説をとなえた科学者、ロボット発明の歴史の裏側、小児十字軍の実態、奇術師たちの奇行、そして日本の蘆原将軍...それら歴史の中に一瞬で消え去った徒花的な文化のガラクタたち18例を丹念に拾い集め作り上げた、これは見事な奇想の標本です。どこから読んでも不思議なめまいに襲われ、心ゆくまで奇妙な世界を堪能できる名著です。
|
 |
|
伊藤整/光文社カッパブックス/1962
¥600 ■sold
数多くの話題作をかかえたカッパブックスの中でも名著の呼び声高い一書。「欧州文学と日本文学の比較」「思想道徳と文学との関係」「社会状況と作家」など、いつの時代に読んでも価値ある論旨が展開される、伊藤整の評論中もっとも愛された文芸論集です。初出は昭和29年、本書はその2年後に出た改訂の版を重ねたもの。先頃、講談社文芸文庫で復刊されましたが、この新書の形で読むのももちろんオツなものです。装幀も都会的で洒脱。つくづく美しい「カッパブックス」だと思います。
|
|