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さて、特集はお楽しみ頂けましたでしょうか。 このドイツから来た本たちに少しでも興味を持たれた方が一人でもいらしたら本望です。その方のためにと言ってはなんですが、特集協力のBRドイツ特派員氏にご登場願って、ドイツの本やベルリンのことなどちょっとおしゃべりしてみました。

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山田庸子  Yoko Yamada
東京生まれ。ベルリン暮らしも4年目に突入。最近は展覧会巡りにも精を出しています。 私的ベルリン案内サイト"Bear Hunt ベアハント"管理人。
http://www.bearhunt.de/main.html


*『Spur』で...:集英社の誇るおしゃれマガジン『Spur』'02 11月号では、スタイリストの岡尾美代子氏が行くドイツ、というテーマのページが。欧州の華やかな他都市とは異なるドイツの風景を岡尾氏の視点で美しくかわいく表現して、見応えのある内容でした。ベルリナーたちもさっそくチェック!


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*『ワン・ツー・スリー』:'61年度 ビリー・ワイルダー監督作品。ベルリンに赴任した米コカコーラ社員の奮闘を描く秀作コメディです。

*トリヤー(Walter Trier):ドイツの児童画家。一連のケストナーの物語に挿絵を提供し続けた人物。このページに拝借しているイラストが彼のものです。

*e.o.プラウエン(e.o.plauen) :本名エーリヒ・オーザー。元々は風刺画家。ナチス政権下に迫害を受け、変名で1934〜37年に名作『おとうさんとぼく』を残す。「1944年5月にゲシュタポに逮捕されて自死を選ぶのですが、その翌年同月にドイツが降伏した事を思うとなんとも残念で...」(山田)

*オクスファム:英国生まれの非営利民間組織。活動範囲はとても広く、 その一端にチャリティショップとしてのオクスファムがあります。スタッフはすべてボランティア、不要な衣服や本・雑貨などを販売して、その収益の一部を恵まれない国での水道を引く技術などに変えています。

mandoku*『漫画読本』:文藝春秋が昭和30年代に出していた、大人向け漫画 &読み物雑誌。シネやオーザー、スタインバーグなど海外の秀作を毎回紹介していました。今みてもなお楽しく新しい雑誌。

*レングレン(Zbigniew Lengren) :ポーランドの風刺画家にして児童作家。新聞連載や数多くの著作を残し、自国のプロパガンダ雑誌「Poland」などにも寄稿、数多くの読者から愛されポーランドの児童・漫画界を代表する人物。お隣東独でも馴染み深い作家でした。

buch
私たちが考える「ドイツが香る本」を勝手に選んでみました*


buch ハーメルンの
笛吹き男

阿部謹也
平凡社
1974年
1284年、ひとりの男に連れられてハーメルンの町から130人の子供たちが消えた...この有名な笛吹男の伝説をもとに、実際にあった子供の大量行方不明事件をめぐって繰り広げられる歴史的考察。ぞくぞくするような知的興奮と共に、読む者を中世ドイツの民衆世界に誘います。


buch どくとるマンボウ青春記
北杜夫
中公文庫
1973年
旧制高等学校では今と異なり、外国語教育はドイツ語がさかんでした。著者が通った旧制松本高等学校では、リルケの訳者でも有名な望月市恵氏が教鞭をとっており、当時の贅沢なエピソードがどくとるの筆から流れ出ます。随所に出てくるドイツ単語も旧制ムードを盛り上げて。


buch
今回は新刊雑誌のこと*

buch Luca no.2
エスクァイア・
マガジン・ジャパン/'03 3月
アート版エスクァイア『Luca』
第二号では、後半に「ベルリン建築を巡る旅へ」と題した特集を。美術館や図書館からポツダム広場にデザインホテルまで、建物を軸にベルリンの魅力を俯瞰しています。旅行を予定している人にもお役立ち、次号発売は'03年6月なのでそれまでにゆっくりチェックできます。 ...しかしベルリンという街は、女性誌よりもアート誌や男性誌向きである事は確か。ドイツ自体がそんな感じなのだけど。


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clover はじめにいろいろ

ブックスリパブリック(以下BR)こんにちは。ドイツの本特集のおまけページ2回目です。ひとえに私の作業の遅さゆえ随分間があいてしまいました...更に、前回の終わりではケストナーの事をお話しましょうと言ってましたが、ちょうど夏にドレスデンに行きたいと思ってるので、その時「ケストナー資料館」も見たいなと。よってケストナー対談はその後に延期!した事をまず最初にご報告しておきます...くどくどしい前置きになってしまいました。

ヨウコさん(以下Y):ドレスデンと言えば、このあいだ『Spur』*で岡尾美代子さんが訪れてましたね。わたし、まだ行ったことないので先越されちゃいました。「ケストナー資料館」も載ってて素敵だった。

BR:あれいいページでしたよね。さすが岡尾さん。最近、ドイツの風景を女性誌で見る事も増えたような気がする...うーんでも気のせいかも(笑)。お買い物という観点でいうと女性誌の捜査線上からはドイツは外れまくりますもの。カルチャー的なものはまた別にしてね。でもそういえば『Spur』はそもそもドイツ語。『Frau』も。

Y:なるほど。日本における、特に若者や女性におけるドイツ的なるもの、みたいなの今度またおしゃべりしたいですね。

BR:是非是非。ところで最近はいかがお過ごしですか?何かトピックスは?

Y:実は今までいつも春は日本へ帰ってたので、冬から春になるベルリンを感じるのは今年が初めて。こちらに来て「春を待つ心」がより大きくなりました。日の長いこれからの季節、思う存分屋外を楽しむドイツ人の気持ちも今はすごくよくわかる。初めての「ベルリンの早春」がトピックスかな。

BR:私たちはわりあい冬の灰色感が好きですけども、そういうのもまた特別の感慨がありますね。ベルリンの春、か...いいなあ。

Y:後はベルリナ−レ(ベルリン国際映画祭)にも参加した『GOODBYE, LENIN!』という東ベルリンが舞台の映画をみたことかな。ホロ苦い映画でね....今、毎月1本ベルリン舞台の映画をセレクトして流してる近所の小さな映画館があってそれにも通ってるんですね。先月はビリー・ワイルダーの『ワン・ツー・スリー』*。撮影中にベルリンの壁ができて、ブランデンブルク門での撮影が出来なくなった事で有名な作品ですけど、そういう壁出現前後、そして壁崩壊前後の映画を続けて見ると、後者が前者へのオマージュだったりする箇所も発見できてすごく興味深い。映画も癖になりそうでコワイです。

BR:教えてもらったので『ワン・ツー・スリー』をビデオ屋で探したけど見つからない!ワイルダー作品の中でも評価は別れるようで、『アパートの鍵貸します』のような名作と違って、日本のビデオ界では今は見るのが難しいかも..との事。残念...根気よく探します。


clover 子供の本のことなど

BR:ところで今回のラインナップは子供の本中心になりましたが、たとえばそちらの古書店では絵本などの扱いはどんな感じですか? 日本では、子供の本のコーナーをおいている古本屋はまだまだ少ない感じだけど。

Y:そう言われると日本では児童古書専門店はあっても、コーナーを設けてる古書店は確かに少なそうですね。ドイツは風刺画家が児童書を手掛けてたというパターンが非常に多くて、20年代だと作家のケストナー、それに元々は風刺の挿し絵を書いていたトリヤ−*やe.o.プラウエン(エーリヒ・オーザー)*などもいて。有名な彼らが作った絵本、児童書ということで風刺モノと並べて置いている古書店もあります。

BR:そういえば初めて海外の古書店を回った時、どの店もちゃんと児童書コーナーを設けてなおかつ値つけも比較的しっかりしているのに感動したものです。くどいけど、日本ではいわゆる黒っぽい立派な古書店では児童書はまず皆無、一般書中心のとこなどでは、あっても100円などの投げ売りで。それが不思議というかもったいないなあ、と思ってBRを始めた..という事もあったりして。

Y:とは言っても、絵本や児童書は古書としてはぞんざいに扱われる、という印象はドイツにしろ日本にしろありますよね。値段を高くしたから扱いがちゃんとされてるってことでもなく...。幼い頃、誰もが読んだり触れたりするものなのに。子供部屋とか児童図書館の本棚にボロボロだけれども収まっているのが、子供の本にとっては一番幸せかもしれない。私なんて、蚤の市で投げ売りされてるものをガサガサあさっては「あーちょっと前まではどこか子供の所にあったはず」って切なくなったりして。なんか、何言ってるのかよくわからなくなってきちゃったけども(笑)。

BR:いえいえとてもよくわかります。でもそれが絵本の宿命なのかもしれないね。子供がより多く触れたものは傷みもひどい場合が多いし、だから古書店も扱いづらい。でもそうやって荒波を乗り越えて自分の元にやってきた絵本や児童書にはいっそうの愛着がわきますね。

Y:私はオクスファム*にも参加しているから、そういう意味でもそこに集まる子供の本を見ると面白いですよ。どんな子どんな人の部屋にあったんだろうと想像してしまって。おじいさんがごそっと持ってくる時もあるんです。そういう時のラインナップの素敵さはたまらない。その歴史にも思いをはせますね。


clover ドイツ的絵本って?

Y:絵本に価値を見い出すのにも、いろんな方法や価値観があるでしょうね。私はどちらかというと話もそうだけど、誰が描いたのかっていうのが気になるし、知りたいタチ。以前「この絵本の作家さんは有名でしたか?」って知り合いの方に質問したら「子供って作家が誰かとか関係ないんじゃないか、その本がおもしろいかどうかがまず第一だよ」と言われてしまった。確かに、幼い頃から誰々の作品だから読まなくちゃっていうセレクトの仕方はなかなかしないですもんね。

BR:それは私たちが大人になったから。物事に付加価値をやたらと加えてしまう。

Y:絵本を探すのにヨコシマな色眼鏡をかけてしまう...(笑)。

BR:デザイナーズものをつい好んでしまったりとかね。でも日本では、ドイツの絵本のイメージとしては、やはりグリム的メルヘン世界だったり、たとえば今回紹介した『das goldene Tor』のような東欧にも通ずる民衆的な素朴さだったりが先に立ってるような感じですね。デザイナーといえばウンゲラーとかはまた別だろうけども。

Y:うーん、東独にもいわゆるデザイナーズ絵本は存在してました。でも、絵本だからちゃんと児童の背丈に合った作りになっているように感じます。気付けば著名な方の挿し絵だったのね、という感じ。

BR:掲載した『Tobis boeser Traum』なんか、制作者は世界的には名は無いだろうけど、本当にかっこいい本づくりをしてくれた。あの硬質なデザインセンスはドイツ的なものを感じますね。 今回作業をしてて、有名無名を問わず様々な顔を持った絵本を扱い、ドイツの絵本に対する印象をあたりまえだけどあらためた感じです。

Y:有名だろうが無名だろうがデザイナーであろうがなかろうが、面白い本は面白いし、美しい本は子供たちにも好まれるってことですね。


clover オーザーとレングレン

BR:ドイツで子供の本といえば、ケストナーは欠かせないけど、それはまた回を改めてお話しましょう。でも今回紹介した『おとうさんとぼく』も欠かすことができないのは同じ。

Y:そういえば、去年の今頃にハンブルクまでわざわざオーザーの展覧会を見に行ったのにその後ベルリンに巡回してきて、滑稽なことしちゃいました(笑)。でもいいです、もう本当にずっとずっと好きな作家だったので、生原画見れて感激だったし。その時、文藝春秋の『漫画読本』*も飾ってあったんだけど、裏表紙が表として飾られてて「あぁ逆だよう」って。なんかこういうの見ると日本てまだまだなんだなぁと思います。誰か言ってあげなくちゃって。その誰かが私だったのかなぁ。何も言わずに帰ってきちゃまずかったですかね...。

BR:「あれ逆ですよ」って言ったらちゃんと直してくれたかな(笑)。ところでもうひとりオススメなのがレングレン*なんですよね。

Y:レングレンは、祖国ポーランドと合わせてとても興味のある風刺画家。 本国ではドイツのケストナー位の知名度だそうなので、代表作のフィルテーク教授のお話は国民的なマンガってことになりますよね。日本でいうサザエさんみたいな。今でもポーランドの週刊誌に掲載されています。自分としては今後も追っていきたい人物ですね。

BR:その調子でドイツ・東独・東欧の絵本の魅力をどんどん追跡しちゃって下さい!


clover おしまい

BR:なんか子供の本に関しては、お互い思い入れが強くて、語りたい事が多すぎて逆にぎくしゃくしたかも。その割には話したりない(笑)!

Y:また別のところで心ゆくまでお話しましょう。 でも全体的な印象としては、西であれ東であれドイツの絵本・児童書には、永遠の童心がそこらじゅうに溢れてると思う。そして「das goldene Tor」のような東欧の絵本の方が、よりイノセントな、私たちがどこかに忘れてしまった何かを表現してる気がしますね。

BR:まさしく『ネバーエンディングストーリー』の「おさなごころの君」のようなね。その感覚は、大人になった今でも絵本を探す上でも大事にしたい。ファンタージェンを滅ぼさないためにね。

(2003年3月18日)
emil


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